中古車の法定整備は必要?整備士が必要性を徹底解説

中古車選びで「法定整備付きってどういうこと?」と気になりませんか?

筆者は整備士として働いていたため、よく

  • 「そもそも法定整備って何?必要なの?」
  • 「法定整備なしの中古車を購入してはダメなの?」
  • 「法定整備って車検とどう違うの?」

といった質問をよくいただきました。

中古車探しを進めていく中で、法定整備の有無はとても重要なキーワードとなります

例えば、法定整備を定期的に行わないことで

  • 「バッテリーが上がってしまう」
  • 「ブレーキの利きが悪くなる」
  • 「タイヤが外れてしまう」

といったように最悪の場合重大な事故を招いてしまうような故障に見舞われてしまいます。

少し大げさに聞こえるかもしれませんが、筆者の整備士経験の中でこのような整備不良車を何度も見てきました。

整備不良による事故はユーザーに責任が重くのしかかりますので、他人事だと思わず読み進めていただければと思います。

「安心」と「安全」を買うという意味でも車検(24ヵ月点検)だけでなく、12ヵ月点検での法定整備も整備士目線としては必要不可欠だと考えます。

では早速ですが、本題の方に入っていきたいと思います。

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法定整備とは?車検(24ヵ月点検)との違いや必要性を解説

中古車探しをする際に

  • 「法定整備あり」
  • 「法定整備なし」

という言葉を目にすることがあります。

まずは法定整備の有無について下記の表を用いて説明したいと思います。

【法定整備の意味】

法定整備あり 納車までに不具合個所の修理・交換を行い、安全に走行できるかチェックする。必要に応じて予防整備も行う。
法定整備なし 上記の点検整備を行わず納車する

※予防整備・・・あらかじめ壊れそうな(寿命が近い)部品を修理・交換しておくこと。

中古車は前オーナーの使用状況を把握することがとても難しいので、法定整備を行う際に発行される「点検整備記録簿」に記載されているメンテナンス記録をもとに判断するしかありません。

そのため初心者の方は、車のことを熟知している整備士が法定整備した「法定整備あり」となっている中古車を選ぶことで、予期せぬ故障などのリスクを最小限に抑えることができるのです。

続いては、「法定整備」と「車検」という言葉の意味を切り離して詳しくご説明していきます。

法定整備とは「安全に車を乗るための定期健診」

法定整備とは、「車が安全に走行できる状態を維持するための点検・整備」となります。

そもそも「法定整備」という言葉自体になじみのない方が多いかもしれませんが、車検(24ヵ月点検)のときに法定整備を同時に行ってしまうことが一般的となっています。

「法定整備をしていない」というのは、すなわち「車検に合格するためだけの必要最低限の整備」または「12ヶ月点検をしていない」という意味合いになります。

車検(24ヵ月点検)だけではカバーしきれない、ブレーキパッドやゴム・ブッシュ類の劣化などを12ヶ月で点検・整備するという重要な役割を果たしています。

※ブレーキパッド・・・車を制動(止める)するための部品。
※ゴム・ブッシュ類・・・ドライブシャフトブーツ、ステアリングブーツ、エンジンマウント、ウェザーストリップなど。

参考:一般社団法人 静岡県自動車整備振興会

法定整備と車検(24ヵ月点検)の違い

自家用乗用車、軽自動車の場合、法定整備を行うタイミングは「12ヵ月点検」と「車検(24ヵ月点検)」の2回になります。

  • 「1年ごとに点検内容が違うの?」
  • 「どんな内容の点検をするの?」
  • 「法定整備はやらないとダメなの?」

などの疑問にお答えしていきたいと思いますので、まずは下記の表をご覧いただき、後段で詳しいご説明をしていきたいと思います。

【法定整備と車検の違い】

項目 内容 規定 罰則
法定整備 故障個所の修理や予防整備を行い、安全に走行できるかチェックする あり なし
車検(24ヵ月点検) 公道を走るための基準を満たしているかチェックする あり あり

【点検項目一覧】

カテゴリー 点検内容 12ヵ月点検 車検(24ヵ月点検)
1.原動機(エンジン) 排気、エアクリーナーの状態など
2.電気装置 点火プラグ、点火時期の状態など
3.制動装置(ブレーキ) ブレーキの効き具合、ブレーキパッドの残量など
4.かじ取り装置(ステアリング) パワーステアリング、ベルトの状態など
5.動力伝達装置 トランスミッションの液漏れの有無、プロペラシャフトの緩みなど
6.走行装置 タイヤの状態、ホイールナットの緩みなど
7.排気ガス防止装置 マフラー取付け部の緩みなど
8.緩衝装置 サスペンションの取り付け部の緩みなど ×
9.煤煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の飛散防止装置 ブローバイガス還元装置、メターリングバルブの状態など ×
10.車枠および車体 取り付け部の緩みや損傷など ×

まず1つ目に「12ヵ月点検」の解説となります。

12ヵ月点検

自家用乗用車(軽自動車含む)の場合は、点検項目が7カテゴリー、全26項目となります。

主にブレーキ廻りやエンジンルームなど、走行性能や安全面に関わるような部分をカテゴリー別に点検し、必要に応じて「修理」「交換」「調整」をしていきます。

車検(24ヵ月点検)では把握しきれない、使用に伴う部品の経年劣化などを12ヵ月点検でカバーする役目があります

参考:法定12ヶ月点検とは

続いては2年ごとに行う車検(24ヵ月点検)の解説です。

車検(24ヵ月点検)

車検とは、「所有する車が国の定める保安基準を満たしているか」を確認するための検査です。

保安基準とは、車が公道を走る際に安全面、環境面に配慮しているかどうかを判断する基準となります

車検を合格した車でないと公道を走ることができませんが、あくまで「検査」なので2年間の使用を保証するものではありません。

また、車検(24ヵ月点検)では12ヶ月点検と異なり、国土交通省の定める「自動車点検基準」という法律に定義されている項目を点検します。

12ヶ月点検よりさらに点検項目が多くなり、10カテゴリー、全56項目となっています。

参考:点検整備~自家用乗用自動車等の2年定期点検整備56項目~|一般社団法人 栃木県自動車整備振興会

このように12ヵ月点検と車検(24ヵ月点検)では、各々に役割や意味がありますので、安心して長く中古車を乗り続けるためにも定期的な法定整備は行うよう心がけたいものです。

整備士の経験談として、法定整備を整備工場にすべてお任せしてくれるユーザーの車は10年、20年とコンディションが良好なまま乗り続けていますので、決して無駄なことではありません。

続いては法定整備の実施の可否について解説します。

法定整備の実施は義務だがペナルティーはない

「法定整備は実施の義務がある」と聞くと、どうしても強制的に法定整備をやらざるを得ないと感じますが、決してそういう訳ではありません。

確かに道路運送車両第48条(定期点検整備)には義務と規定されていますが、法定整備を受けていない場合の罰則規定というのは実はないのです。

URL:点検整備の種類 | 自動車 – 国土交通省

ただし、車検(24ヵ月点検)切れの状態で公道を走行してしまうと道路運送車両法の罰則対象となってしまいます

その際の違反点数は6点加算され、過去の前歴に関わらず30日間の免許停止処分となりますので車検切れには十分注意しましょう。

参考:車検切れのペナルティ(罰則)は何があるのか

繰り返しになりますが、

  • 「法定整備未実施での罰則はなし」
  • 「車検(24ヵ月点検)の未実施は罰則あり」

というように覚えておきましょう。

続いては、中古車選びの際の法定整備の有無について解説していきます。

極上の中古車を見つける裏技

インターネットに掲載されている中古車はごくわずか。

中古車は毎日売り買いされ非公開な車両は膨大にあります。

特に極上車はインターネット掲載せずとも売れるため「非公開車両」が多く存在します。

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中古車は「法定整備付き」を積極的に選ぼう

グーネットやカーセンサーといった中古車サイトで車探しをする際に、

  • 「法定整備付き」
  • 「法定整備なし」
  • 「法定整備別」

などの表記を目にすることがあります。

まずはこれらの意味を理解しておくために下記の表をご覧ください。

記載内容 意味 懸念事項
法定整備付き 販売価格の中に法定整備作業と費用を含んでいる 車両本体価格が割高に見える
法定整備なし 法定整備を行わずに販売している 購入直後にブレーキパッドなどの消耗品の交換が発生し、メンテナンス費用がかさむ可能性がある。
法定整備別 法定整備を行うが、車両本体価格とは別に法定整備費用が必要になる 法定整備費用が別途掛かるので、予算オーバーしてしまう可能性がある。

年間500台にも及ぶ車の法定整備を行ってきた筆者としては、法定整備付きの中古車を選ぶことが失敗しない車選びの近道だと言えます

これまでの経験上、車検などで見積もりを取る際に

  • 「オイル交換はまだやらなくて大丈夫」
  • 「タイヤも使えるなら残溝もひび割れも気にしない」
  • 「このまま車検に通るなら何もしなくて大丈夫」

といったように整備のプロがアドバイスしているにもかかわらず、法定整備をないがしろにしている人は後から泣きを見ることになります。

先ほど挙げた例に沿って体験談をお話しすると、

  • 「エンジンオイルを交換しないままオーバーヒートして廃車になった」
  • 「高速道路でタイヤがバーストした」
  • 「車検後に次から次へと交換部品が発生した」

このように法定整備を避けて通ったとしても、最終的には「故障」という形で自分へ返ってくるのです。

故障だけならまだしも、廃車になってしまったり、整備不良が原因で事故を起こしてしまっては後々後悔しか残りません。

法定整備付き中古車の販売価格は「法定整備なし」の車と比べて少し割高感があるかもしれませんが、安心して毎日のカーライフを送るためにも、「法定整備付き」の安全が担保されている中古車を選ぶよう心掛けましょう

それでも「価格の観点から法定整備付きは選びづらいなぁ」という方がも多いので、法定整備付きを選ぶべき理由を紹介していきます。

法定整備付きを選ぶべき理由は3つ

  • 「なるべく費用を抑えたいから法定整備はやりたくない」
  • 「年式の新しい中古車だから必要ないのでは?」

とお考えの方、まずは法定整備を行うことで得られる下記のメリットをご覧ください。

確かにタダで法定整備を受けることはできませんが、国家資格である自動車整備士が点検・整備するので「安心」「安全」を得ることができるのです。

筆者の私も国家2級自動車整備士の資格を保有しておりますが、車は素人が簡単に整備できるものでもありません。

  • 「車のことはよく分からない!」

という方は迷わず法定整備をプロにお願いしましょう。

理由1:メーカー保証の延長ができる

ディーラーなどで法定整備を受けている場合、該当する点検項目に故障などの不具合が起きた場合にメーカー保証を受けることができます。

大抵どこのメーカーも、法定整備未実施による故障については保証対象外としていることが多いです

URL:中古車の保証(メーカー保証・ディーラー保証・グー保証)のメリット|中古車なら【グーネット】

理由2:整備不良による事故責任が軽減する可能性がある

12ヶ月点検や車検(24ヵ月点検)の際に法定整備を行うことで、整備不良が原因による事故を起こした場合に法的責任が低くなる可能性があります。

整備不良で事故を起こした場合、当該車両を運転させた者、または運転した場合に罰則対象となりますので、他人ごとでは済まされません。

初心者ほど自分で整備できず、整備不良も予見できないため、気を使ってください。

参考:整備不良が原因で発生した事故 – 人と車の安全な移動をデザインするシンク出版株式会社

理由3:査定時の評価額がアップしやすい

12ヶ月点検や車検(24ヵ月点検)で実施した整備記録を「点検整備記録簿」に残しておくことで、「車のメンテナンスが行き届いている」という証明書代わりになりますので、車を下取りや中古車販売店へ売却する際の評価額が上がりやすくなります。

ここからは法定整備なしの中古車を購入した実例を紹介します。

コラム:すぐ壊れた!法定整備なしの中古車を購入した悲劇

知り合いの実話ですが、中古車探しをする際に、とにかく相場より安い車を検索して探していたところ、「法定整備なし」の車で気になる1台を見つけました。

特に「法定整備なし」の意味も分からず、気にすることなく購入することにしました。

内外装はとにかく綺麗で、手入れが行き届いている車のように見えたのですが、車検はユーザー車検オンリーの車でメンテナンスが行き届いていないことに後から気づかされました。

それに気づいたのは購入からしばらく経ってからで、

  • ブレーキパッドの交換
  • ドライブシャフトブーツの交換

など、次から次へと消耗品の交換が続き不審に思ったためです。

整備をしてもらった自動車用品店の整備士の指摘を受け判明したようです。

結局のところ、乗り出し価格が安くても不具合が多発してはランニングコストが掛かってしまいますので、整備士である筆者のように「車のメンテナンスは自分でやる!」という方以外は初めから整備をお願いしてしまいましょう。

続いては、法定整備の相場についてご説明していきたいと思います。

法定整備の相場は1~3万円!車検時に法定整備をすると工賃がお得な場合も

  • 「法定整備って高いんじゃないの?」
  • 「安全面には気を付けたいけど高そう・・・」

など、法定整備の費用面を気にされる方が多いかと思います。

しかし、法定整備の相場というのは決して莫大な金額が掛かる訳ではありません

全国一律で同じ金額ではありません、法定整備の基本料金の相場は以下の通りとなります。

【法定整備の世間相場】

法定整備 費用 法定整備を行う場所
12カ月点検 10,000円~15,000円 ディーラー、中古車販売店、自動車整備工場、自動車用品店
車検(24ヵ月点検) 20,000円~30,000円

上記の基本料金に加え、必要に応じて部品の交換や修理が発生します。

車検(24ヵ月点検)の場合はさらに税金などの法定費用が含まれますので、見積もりの金額は総じて高くなってきます。

また、依頼する店舗にもよりますが、車検(24ヵ月点検)のタイミングで法定整備を行うことで工賃が割安になることもありますので、事前に費用面の確認しておくと良いでしょう。

参考:一般的な車検の費用・平均相場の目安はいくらくらい?

実例:法定整備「あり」と「なし」を比較

中古車検索サイトの情報の中には

  • 「価格」
  • 「年式」
  • 「走行距離」
  • 「カラー」

などなど、様々な車両情報の中に「法定整備の有無」も掲載されています。

車両本体価格自体は安く見えるのですが、法定整備を行う場合は別途有償で掛かってしまうため、価格の安さだけで判断しないよう、気を付けましょう

【法定整備ありのケース】

こちらの車両は12ヵ月点検が含まれた価格設定となっています。

併せて12ヵ月間、走行無制限の保証も付いています。

【法定整備なしのケース】

こちらの車に関しては保証自体も付帯していなく、別途有償保証となります。

  • 「自分ではメンテナンスできない」
  • 「なるべく故障は避けたい」

とお考えの方は、迷わず「法定整備付き」で中古車探しをしましょう。

次に、どうしても法定整備付きの中古車がないケースを想定して解説いたします。

「欲しい車が法定整備付きではない」そんなときは契約時に依頼しよう

必ずしも欲しい中古車が法定整備付きとは限りません。

そんなときには契約時に別途法定整備を依頼してしまいましょう。

12ヵ月点検は絶対に12ヵ月目に行わなければいけないものではありません

車検付きの中古車だとしても、何ヶ月も公道を走っていない車は各部のオイル切れやブッシュ類などの劣化が心配されますので、法定整備を行って一度リフレッシュさせておくことが大切なのです。

事前に法定整備を行うことで、予防整備の観点からも予期せぬ不具合を確認できるチャンスでもあります。

まとめ

法定整備という言葉が意味するもの、必要性などが今回の記事を通してご理解いただけましたでしょうか?

中古車選びをする際にあまり「法定整備」という言葉をクローズアップすることはないかもしれません。

しかし、安全面、後のコスト面を考えると法定整備付き中古車がとても賢い選択であることが見えてきます。

せっかくお気に入りの一台を見つけたのであれば、尚更長く乗り続けたいものです。

そんな後押しができれば筆者としてもこの上なく嬉しいです。

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