SEやSIerを就職・転職を検討している方は「ITゼネコン」という耳慣れない単語を聞くことがあります。
ITゼネコンというのは、官公庁や金融業界、インフラ事業などの大規模案件を取り仕切ることのできる大手のSIerのことを指します
システム開発は膨大な開発作業が必要となるため、大規模なプロジェクトでは複数社の協力が必要となります。
その特徴からITゼネコンと呼ばれる多重の下請け構造が生まれるわけです。
この記事では7年SI業界に身をおいた筆者の経験をもとに、SI業界の特徴や問題点、どうするべきかをにわかりやすく紹介していきます。
ITゼネコンが生み出す独特の特徴を理解して「SIer業界に就職しなければよかった・・・」とキャリアのミスマッチにつながらないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
ITゼネコンとは?
ITゼネコンという言葉の意味を知るにはまず「ゼネコン」についての理解が必須です。
「ゼネコン」とは、「General Contractor」の略であり、元々建設業界の言葉でした。
顧客からの工事を一手に引き受け、工事全体を取り仕切る「工事元請負企業」のことを指します。
「ITゼネコン」というのはこれのIT業界版で、「システム開発元請負企業」ということになります。
IT業界はこのITゼネコンを筆頭に元請け、下請け、孫請け、さらにはひ孫受けまでのピラミッド構造を形成しており、この頂点に立っているITゼネコンは大企業が占めています。
このITピラミッドを含む業界構造そのものを「ITゼネコン」と呼ぶこともあります。
ITゼネコンは官公需を独占しており、業界の既得権益として問題視されているという一面があります。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ITゼネコン
ITゼネコンを構成と仕事内容
ITゼネコンにはどのような企業が属しているのか、また彼らの仕事内容はどのようなものなのかを見ていきましょう。
また、下請けや孫請けの仕事内容にも触れていきます。
元請け(直請け、プライム)の仕事内容
いわゆる直請けであるITゼネコンは顧客との折衝、プロジェクトのマネジメントを行っていきます。
そのため、プログラミングをすることはまずありません。技術的な部分はすべて下請け、孫受けが担当することになります。
IT業界に入ってバリバリ技術知識を付けながらSEとして活躍したいと考えている人には、イメージとのギャップが大きくなる可能性があります。
しかし、発注元から直接受注しているだけあり、1番良い給料をもらえるのは元請社員になります。
具体的な企業名は
- 日立
- 富士通
- NTT
- NEC
などの企業になってきます。
下請け(一次請け)の仕事内容
下請け企業は元請けから設計やプログラミングといった開発業務を受注します。
実質的に開発の最前線は下請け企業が担当することになると言っても良いでしょう。
プロジェクトの規模によっては下請け企業がさらに孫受けが企業に発注することもあります。
この場合は孫受けが企業のメンバーの管理も行うことになり、開発+マネジメントという業務が発生します。
具体的な企業は数多くなるので紹介しきれませんが、富士通系であれば
- 大塚商会
- 都築電気
などがあげられます。
孫請け(二次請け)の仕事内容
下請け企業のリソース(人手)不足に陥った場合、孫請け企業に発注することがあります。
システム開発において人手が足りなくなるのは「開発(プログラミング実装)フェーズ」と「テストフェーズ」です。そのため、プログラミング要員またはテスト要員として孫受けメンバーが動員されていくことになります。
下請けメンバーが作成した設計書を元にゴリゴリプログラムを書いていく、もしくはテスト仕様書に基づいてテストを行っていくというのがメインの業務になるでしょう。
ITゼネコン誕生の背景とメリット
もともと、官公庁が発注するシステムは大規模になる傾向があります。
大規模プロジェクトで中小のSIerが受注したとしても、開発できるだけのリソースが足りないという「人員的な問題」があります。
無理して受注し、万が一システム開発に失敗して多額の損害賠償を求められてしまった場合、そのリスクを担保できないという「資金的な問題」もあります。
そのため、大手企業が元請けになり、プロジェクトを取り仕切ることでリスクを背負いきれない中小企業の受け皿になることができるというメリットがあります。
コラム:ITゼネコン、ベンダー、SIerの違いとは
IT業界の話題では「ITゼネコン」のほかにも「ベンダー」「SIer」などの言葉がよく出てきます。
「ベンダー」というのは製品のメーカー、または販売会社のことを呼びます。
ユーザーに対して製品提供している会社をベンダーと呼び、開発だけをしている会社はベンダーとは呼びません。
ベンダーの中にはハードウェア・ベンダー、ソフトウェア・ベンダー、システム・ベンダーなどがあります。
SIerとは「システム構築=System Integration」に「~する人」の「er」を付けた造語で、主にシステム開発を受注して開発する企業のことを呼びます。
ベンダーの中にも開発を受注している企業もいるため、明確に切り分けることができない場合もありますが、販売窓口を持つのがベンダー、開発専門がSIer、両者の中で大規模システムを受注して取り仕切っているのがITゼネコンと考えれば少しは整理できるのではないでしょうか。
ITゼネコンのヒエラルキーからわかる問題点
ITゼネコンにはメリットもある代わりにさまざまなことが問題視されています。
元請け企業の丸投げと技術力なきリーダーの混乱
先述のとおり、多くの元請け企業の社員はIT技術とはかけ離れた業務内容になるため、技術的なことは突っ込んで話せない元請けも少なくありません。
この状態で、プロジェクトのマネジメントを行うことになると、開発現場である中小企業の下請けメンバーとも話が噛み合わないということが発生します。
しかも、顧客の要件が技術的に難しいかどうかの判断もできないため、元請けが安易に受けてきた仕様変更や機能追加を開発現場に丸投げということもあります。
これによって現場が混乱に陥るというのはよくある話です。
また、マネジメントをするにしても、どの程度の期間でシステムを構築できるのかの見積もりも甘く、現場から猛反発を受けてしまうこともあります。
コラム:下請けSEの不満は典型的なセクショナリズム
よく丸投げをするSIerに対し不満を漏らす下請けのSEがいます。
筆者は長年IT業界で見てきましたが、分業化したことによるセクショナリズムの一種に感じます。
大手SIerは受注のために半年から数年に渡りクライアントの経営課題を分析・提案しています。
受注後の大規模プロジェクトでも炎上しないように仕組みを整えています。
下請けのSIerはそういった営業活動や大規模プロジェクトが出来ない代わりに、ものづくり力を提供します。
単に役割です。
その役割を忘れ大手SIerにも現場のものづくり力を求めてしまったりするのはセクショナリズムの一種でしょう。
不満が収まらない場合は大手SIerへ転職し、大規模プロジェクトを回す役割になることをおすすめします。
下請け・孫請け企業は下流作業が中心
元請け社員は要件定義やスケジュール管理、各種会議などの上流工程を担当するのに対し、下請け・孫請けの社員は設計・開発・テストなどの下流工程ばかりになります。
下請け企業はまだ要件定義や設計段階から関わっていくことができますが、孫請け企業がプロジェクトに参入するのは開発フェーズに入ってからですので、やることはほとんどプログラマーと変わりません。
下請け・孫請け企業は納期・費用を調整しづらくきつい・帰れない・厳しい
下請け・孫請け企業というのは、元請けが決めたとおりに動く必要があります。
そのため、かなり無茶な納期と予算でも受注するということも起こってきます。
スケジュールと予算というのは連動する要因です。
たとえば、本来であれば開発期間1年、予算1億円の案件を開発期間が半年、予算は5000万円で受注してしまったとします。
そうすると、単純計算でも1人あたり4倍の作業量をこなす必要が出てきます(実際にはもっとひどいことになります)。
こうなってしまうと連日終電まで帰れない、休日出勤ということになるいわゆるデスマーチ状態に陥ります。
給与格差の問題
ITピラミッドによる構造は上流に行けば行くほど手取りがよくなります。
元請け企業が顧客から1億円で受けた仕事を5,000万円で下請け企業に発注、下請け企業は3,000万円で孫受けに発注という形になります。
当然1番儲かるのは元請け企業です。これは社員の給料にダイレクトに響いてきます。
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ITゼネコンの今後は安泰ではない
IT業界の多重下請け構造は以前から問題視されており、下請け・孫請け企業のSEはIT土方などと揶揄されることも少なくありません。
ITピラミッド構造の改革は近年とくに叫ばれるようになっており、どこかのタイミングで業界編成が起きても不思議ではありません。
ITゼネコンは今後も安泰かと言えばそういうことはないでしょう。
ただし、さきほど紹介したような大手のSIerが業界編成によってやすやすと潰れるかと言うとそういうことは無いでしょう。
大切なのはどのような自体になっても良いように「SEとしての商品価値」を高め続ける意識を持つことです。
そうすれば、何が起こっても恐れることはありません。
働くなら直請けできるSIerがベター
以上のことからも、給料面、ワークライフバランスを考えると長く続けることができるのは元請けSIerが良いでしょう。
プログラミングもできるSEを目指すのであれば、独立系、自社製品を開発している企業で学ぶのも選択肢の一つです。
まとめ
ITゼネコンというのは、官公庁や金融業界、インフラ事業などの大規模案件を取り仕切ることのできる大手のSIerのことを指します。
給与面やワークライフバランスを考慮すると元請けのSIerになる方がメリットが多い反面、技術的なスキルを伸ばしていくことができないという問題もあります。
自分が目指すSE像をよく考えて、どの会社に就職するかを決めていきましょう。